『 坊っちゃんと四国 』
two doves
start hopping an archipelago
wind blows
他人様がこぞって海外に出かけようという機会に、地味でかつお金もかかる国内旅行を敢えて選ぼうという態度は
卒業旅行と同様に新婚旅行でも変わらなかった。我が相棒もまた、その手の人だったためである。
四国行きの決め手になったのは、鯨・漱石・戻りガツオであった。
11月の遅い台風による荒波に煽られながら、フェリーサンフラワー号は一路土佐を目指す。竜馬を育んだ桂浜から四国のど真ん中を北上して松山へというルートに、元カヌーイストとして聖なる四万十の流れを加えたのがその時の旅程である。
土佐入りしてから、豪快なカツオのたたきを含めた皿鉢料理三昧。四万十では、銘酒 千代登 に惚れ込んだ。この戻りガツオのたたきと千代登の組み合わせは今でも日本料理のひとつの頂点だと信じているが、それを心行くまで味わう。一生に一度にふさわしい贅沢であった。四万十の朝焼けも忘れがたい絶景である。
息を飲む四国カルストの風景に見せられながら、バスに揺られて坊ちゃんの松山へ。明治期に偉大な文学者を輩出した松山には、今もその頃に似ると思われる空気が街角に吹きだまる。大正のように甘くはなく、厳格な雰囲気の中にいささかのユーモアが見え隠れする土地柄に思われた。五色そうめんにタルト、坊ちゃん団子にジャコ天と心に触れる味もあれこれある。
浮かせた飛行機代を宿賃に充て、道後では飛び切りの宿に荷を解いた。温泉は漱石先生が泳いだ頃と変わらずに深い。芸者さんが念入りに顔をこしらえている姿が朝の風景の中にある。オヨグベカラズの湯で、やっぱり、泳ぐ。
20年、再訪できずに来た。いよいよ今年は那智勝浦にも寄り道しつつ、ホエールウォッチングなぞも組み合わせて千代登に舌なめずりするのをワクワクして待ちながら、懐かしいかの地を目指す所存だ。

